読んでみませんか〜その四

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 2014年のその三から、随分間が開いてしまったが、オススメ本を紹介するこのコーナー、今回は角幡唯介の「極夜行」です。

 最初に読んだ角幡氏の著書は「空白の五マイル」だった。若い頃ニュースステーション等で見た、大谷映芳氏が撮影したツァンポー川の奥深さにそそられた私は、この本を相当の興味を持って読んだ。そこには、想像に違わないツァンポー川の深淵が詳細に記載されており、予想以上に面白かった。その後も「雪男は向こうからやって来た」「アグルーカの行方」「漂流」と続けて読んだが、冒険とはやや違った角度からの作で、此方は若干の物足りなさを感じた。これについては、角幡氏本人も同じ思いを抱いていた様だ。

 そして、今回の「極夜行」。地理的秘境が殆んど無くなった現在に、新たな切り口で冒険を再定義し、それを確認すべく「極夜」へと向かう。白夜が一日中明るいものであるのに対し、極夜は一日中暗いものだと思っていたが、良く良く考えると夜には月がある訳で、私の経験からも満月前後であれば、かなり明るいと思われる。しかし、新月近くは真の闇に包まれる。想像を絶する暗闇。その状況を考えるだけでも恐怖に慄く。そんな場に身を置かれたら、私なら発狂するかも知れない。
 そんな常識を超えた世界の奥に、更なる景色を見出す感動。そして、極夜を終わらせる最初の太陽を、胎内から産道を通って生れ出る赤子に準え、自らの中にも新たな世界を開く。ワイドクラックに魅せられた者達が語る、胎内回帰願望に近いものを感じた。
 更に、冒険は人跡未踏の未知の場所にのみにある訳では無く、既知の場所であっても深くアプローチする事で新たな冒険が生まれるとの考察。これは、登山に於けるバリエーションや厳冬期の登攀等に近い考え方だ。

 この作品は、冒険の書としてとても興味深いものであり、また色々と考えさせられる作品だ。それに、次々と起こる想定外のアクシデントにページが進み、読み物としても一級品だ。笑いあり、涙あり、感動ありの、角幡唯介渾身の名著だと思う。


 そしてこれは、愛犬ウヤミリックの命を賭けた冒険譚でもある。
by kakera365 | 2018-04-20 22:06 | Soliloquy | Comments(0)
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