月と六ペンス

 態々説明するまでもなく、サマセット・モームの代表作である。

 私は余り本を読む方では無い。読んだとしても、山岳関係の書籍か、文庫本が多い。その中でも良く読むのが、外国の文学である。理由は、外国人作家の作品を読む事で、他国の文化を学べると言う事と、既に評価が確立された物であれば、読んでも時間の無駄にはならないだろうと言う理由からだ。だから、間違っても日本人の売れっ子作家の作品なんぞは読んだりはしない(横山秀夫は読んでるけど)。
 ま、前置きは置いといて、何で「月と六ペンス」なのかと言うと、この作品が久し振りにインパクトを受けたと言うか、ショッキングだったと言うか、何と言うのか随分と考えさせられる作品だったからだ。内容は、ゴーギャンをモデルにした、単なる一画家の生涯を書いたものであるが、その表題に象徴される様に「夢と現実」の残酷さを表した稀有な作品だと思う。今までにも、シェークスピアの「ヘンリー四世」やヘルマン・ヘッセの「春の嵐」、カミュの「ペスト」等にインパクトを受けた事があったが、今回はそれ以上かも知れない。
 モームはそもそも、自作に文学的な趣向は一切凝らさない、要は話が面白ければOKな作家だ。だが、だからと言って内容が薄っぺらい訳では無く、寧ろ人間の心理を深く抉っているとさえ言える。人間の心の奥底には矛盾に満ちた魂が眠っているのだと言う事を、そしてそれが自分にも当て嵌まる事を、この作品を通して再認識したのだ。
 この作品を読んでから暫くの間は(今も続いているが)、相当な無力感、虚脱感に襲われて、何をするのも嫌になってしまった。一種の鬱状態に陥った様だ。私は元来が楽天家に出来てるので、病気になったりはしないが、それでも精紳的に相当疲労している事は間違い無い。その矛盾した苦しみを吐き出す事も出来ずに、偽りの笑顔で毎日悶々と過ごすのは、40過ぎのオッサンには正直辛い。
by kakera365 | 2008-11-19 22:13 | Soliloquy | Comments(0)
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