ROCK&SNOW071

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 今回の目玉は、前号の時にも紹介した、大西良治による「台湾・豊坪溪左俣」の完全遡行。正直、早く読みたくて堪らなかった。

 前号のヒーロー倉上慶大も凄いクライマーだが、この大西良治も全く引けを取らないスーパークライマーだ。
 倉上君がボルダー一辺倒からトラッドへ移行したのに対して、大西君は当初から精力的に沢登りをしており、称名廊下やザクロ谷、池ノ谷ゴルジュの遡行や、劔沢大滝や称名滝、梅花皮の滝の登攀等、日本中の難課題を総ナメにしている。勿論、フリークライミングでも強く、ルートのフォッサマグナ(5.14a)やボルダーの蜥蜴(四段)等の初登もしている。
 大西君には何度か会った事があるが、とても物静かで、悪く言うと愛想が無い感じもするが、時折見せるはにかんだ様な笑顔が純粋さを感じさせ、クライミングが好きだと言う事が伝わって来る。静かな中に、これだけの登攀を成し遂げる、燃える様な魂が宿っているのだろう。

 台湾の渓谷の凄さは、海外遡行同人の記録等で知っていたが、今回改めて写真を見て「凄い所に行ってるんだなぁ」と思うと同時に、少し恐怖を感じた。沢登りをした事がある人は分かると思うが、沢の場合はアルパインクライミング同様、谷に居る間中ずっと圧力を感じ続ける。ましてや今回の報告写真の様な、とんでも無いゴルジュが延々と続くとなれば、私ならプレッシャーで初日から吐いてしまうだろう。12日目!のゴルジュですら、普通にお目に掛かれる代物では無い。

 沢登りは日本独自の登攀だと言われる。それは、深い谷に囲まれた山々と、そこに生きる人々との間に、必然的に生まれた行為なのだと思う。大西君は日本屈指の沢屋だ。とすれば、間違い無く世界屈指のWATER CLIMBERなのだ。

 これからも彼の登攀からは目が離せない。
by kakera365 | 2016-03-11 00:30 | クライミング | Comments(0)
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