今回のボルダリングツアーで、数年来の目標であった「阿修羅」を完登した。 4年前にこの課題に出会った瞬間、何かが全身を貫いたのを憶えている。薄被りのフェースに真っ直ぐ伸びたクラック。要所要所に見事なまでに鏤められたポケット。岩がここを登れと言わんばかりの美しい課題だった。 最初はクラックの処理で手間取った。得意系である筈なのに、中々高度が上がらない。良い感触が掴めたと思ったら、今度はそこ迄すら行けなくなる。そんな事の繰り返しがずっと続いた。最上部のポケットを触ったのは3年間で一度切りだった。 今度こそはと意気込んで、何時もは初日に小川山へ行く所をパスして、直接乗り込んだ。近くでアップしてから「阿修羅」に向かう。しかし、課題を目の前にすると「今回もまた登れずに帰る事になるのでは・・・」と不安で一杯になる。そんな不安を振り払う様に準備をして、スタートホールドに手を置き、ふーっと息を吐く。 READY GO! 下部のムーブは何の問題も無かった。3年間トライし続けた結果、身体がムーヴを覚えてしまったのだろう。続くムーヴもイメージ通りこなし、あれだけ遠かった最上部のポケットも簡単に取れた。さあ、ここからは未知の世界。 前半はクラックがメインだが、後半はポケットばかり。アンダー気味のものや、ピンチ持ちのポケットを繋ぎ最後のマントルへ。最後のポケットを持った瞬間、予想以上の甘さにムーヴが止まった。ホンの何秒か躊躇したが、ここで反さなければ「次は無い」と心を決め、右足に「抜けるな」と祈りを込めた。左手の荷重が抜け、マントルが反ったと分かった瞬間、完登を確信した。 登り終わった瞬間は、何とも複雑な心境だった。1トライ目で呆気無く登れたと言うのもあった。完登出来た喜び、終わってしまった悲しみ、課題への感謝等、色々な感情が湧き出て来た。降りて来て皆んなとハイタッチした後、暫くは座って「阿修羅」をぼ~っと眺めていた。何なんだろう、この気持ちは? ここ最近、クライミングの調子が良く、1月の「ダイヤモンドスラブ」、3月の「アゲハ」、そして今回の「阿修羅」と、絶対登りたいと思っていた課題を、次々とクリアして行くのはとても嬉しいし、確実にレヴェルアップしてるんだと実感する事が出来る。 しかし、こうサクサクとクリアして行くと、次なる目標を探すのも大変だ。各エリアに宿題は沢山あるが、目標とする課題はまた別モノだ。グレードに関係無く、本当に美しく、心惹かれるラインを探し続けて行きたい。 新たな目標を探して、放浪の旅は続く・・・
by kakera365
| 2010-05-20 23:19
| Soliloquy
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